祝儀袋や不祝儀袋は、人生の節目やイベントごとで登場するアイテム。ご用意する機会の多い人でも少し迷うこともあるほど、なかなかに複雑です。この記事では、さまざまなシーンで対応できるように、祝儀袋・不祝儀袋の全般的なマナーについてご紹介します。
祝儀・不祝儀にはどんなものがある?
祝儀とは、喜ばしい出来事のことを指します。結婚、出産、進学、昇進、受賞、受章、開業、新築などさまざまなうれしい出来事に対して、お祝いの気持ちを込めてお金を包む袋が祝儀袋です。また、景品やお礼、ご挨拶などにも祝儀袋を用います。
一方、不祝儀は、良くない出来事や悲しい出来事を指します。不祝儀の代表的な出来事である通夜や葬儀では、参列する際に香典袋を持参しますが、これには不祝儀袋を使います。そのほか法事・法要全般に不祝儀袋を用います。
こちらの記事では、宗教・宗派に合わせた香典袋を解説しています。
お葬式の香典マナー 葬儀用封筒(香典袋)の書き方・選び方
水引き・熨斗(のし)の選び方
水引の色や本数の使い分け
祝儀袋には赤白や赤金、不祝儀袋には黒白や黄白が用いられます。慶弔ともに5本1組が主流で、奇数(3本・5本・7本)があります。婚礼関係は10本1組ですが、「5本と5本(両者が手を組むに通じる)」と解釈します。
水引は本数が多ければ多いほど見た目の豪華さが増します。贈る金額と比例するように本数が増えるイメージです。
繰り返したい出来事は蝶結び(花結び)、1度で良い出来事は結びきり
水引にはいろいろな結び方がありますが、基本的には以下の2点をおさえておけば安心です。
「繰り返したい」出来事は蝶結び(花結び)
ひっぱると解けて、再び結べる蝶結び(花結び)は、何度あっても良い出来事に用いられます。
例)出産、入学、昇進、引越し、新築、開店など。また、挨拶や謝礼にも適しています。例えば、金封ではありませんが、お歳暮やお中元にも蝶結びののし紙をかけます。
「繰り返しを避けたい」出来事は結びきり
引っ張ると結び目が締まる結びきりは、1度限りの出来事に用いられます。複雑に見える「あわじ結び」も、引っ張っても解けないので、結びきりの一種です。
例)婚礼関係の祝儀袋、快気祝いの祝儀袋、香典などの不祝儀袋
熨斗(のし)がなくとも「のし袋」
本来の「熨斗(のし)」とは、祝儀袋の右上にある、小さな飾りのこと。打ち伸ばした(=のした)干しあわびを和紙で包んだものが原型で、縁起物のひとつです。そのため、ほとんどの祝儀袋には添えてあり、不祝儀袋にはありません。
この小さな飾り(=熨斗)がないものは、本来は「のし袋」ではないのですが、現在は便宜上、いずれの金封も「のし袋」と呼びます。不祝儀袋のほか、お見舞いなどで使用するのし袋にも、本来の熨斗は付いていません。
以下の記事では、慶事や弔事のほか、謝礼や寸志など、シーンに合わせた水引き・熨斗(のし)の選び方と、その理由を詳しく解説しています。
のし袋の種類と選び方、状況に合った使い方について解説
餞別(せんべつ)は蝶結び(花結び)だが、例外も
これまでお世話になった方が新天地へ移るなど遠くに行かれる際に、前途を祈る気持ちでお贈りするのが「餞別」です。退職や転勤・転居、旅行や留学などでも用いられます。
基本的に餞別は蝶結び(花結び)を選びますが、結婚退職の場合は、結婚祝いを兼ねているので、結びきりの水引きを選び、表書きは「御結婚御祝」とします。
退職者への餞別のマナーや金額相場などは、以下の記事でご紹介しています。
大人のマナー! 退職者へ贈る餞別(せんべつ)、その意味と相場を理解しよう
包む金額・お札にもマナーが
祝儀袋には新札、不祝儀袋には使用感のあるお札を用意
祝儀袋に包むお金は新札です。ご祝儀を渡す予定があるのなら、うっかり忘れてしまわないよう、銀行で早めに新札に両替してもらいましょう。
一方で、不祝儀の際のお札は使用感のあるものがふさわしく、もし新札しかない場合は一度二つ折りにして、折り目をつけたものを使用します。これは、通夜や葬儀の不祝儀にあたって、大急ぎで駆けつけた(=新札を用意して待ちかねたわけではない)ことを示すためとされています。
金額(もしくはお札の枚数)は、祝儀袋・不祝儀ともに奇数
包む金額は贈るシーンやお相手との関係性によって違ってきますが、基本的には偶数(2万円、4万円など)は避けられてきました。これは、偶数が割り切れることから「別れ」につながると考えられてきたためです。
しかし現代では祝儀で2万円のケースもよく見られ、8万円は末広がりだから縁起が良いとされる向きもあります。葬儀も2万円や2千円は構いませんが、「死(4)」「苦(9)」を連想する金額は現在もタブーです。
また、金額が偶数の場合は、お札の枚数を奇数にするという方法もあります。例えば2万円なら、1万円札1枚と5千円札2枚で合計3枚のお札にするといった具合です。
祝儀袋・不祝儀袋のお札の向き
祝儀・不祝儀では、お札の向きが異なります。
ちなみにお札の裏表は、人物の肖像画があるほうが表、ないほうが裏です。
祝儀の場合はお札を表にしてそろえて、祝儀袋の正面から取り出した際に、まず人物の顔が現れる(=上にくる)ようにいれます。
不祝儀の場合はお札を裏にしてそろえて、人物の肖像画が上に来るようにします。不祝儀袋の正面から取り出した際には、人物の肖像画は反対側にあるので見えませんが、上にくるのは祝儀袋と一緒です。
これは、お金を出したときに人の顔が見えないことから、「顔を伏せて悲しさを示す」という意味があるとされています。
表書きに記載する2項目
表書きに記載する項目は、祝儀袋・不祝儀袋ともに次の2点です。
例外的に、多くの方が祝われる授賞式などでは、どなたに向けたものなのか分かるようにするため、袋の左肩にお相手の名前を「○○(フルネーム)様」と記載しておきます。
表書きに書く項目
- 水引の上に、贈る目的
- 水引の下に、贈り主の名前
また、使用する筆記用具は、祝儀袋なら黒の筆ペンかサインペン、不祝儀袋ならば、お通夜と告別式のときだけは薄墨の筆ペンかサインペンを用います。お通夜と告別式以外の不祝儀は、祝儀袋と同じく黒で記載します。
中袋(中包み)に記載する3項目
お金を包む中袋に記載するのは、祝儀袋・不祝儀袋ともに「金額・贈り主の氏名・贈り主の住所」の3項目です。
中包みに書く項目
- 封筒の表中央に、包んだ金額を「金 ○○円(または圓)」と書きます。
数字の部分は通常の漢数字ではなく「壱・弐・参」「万→萬」「千→阡または仟(どちらでもOK)」といった大字(だいじ)を用います。
例えば1万5千円を包んだなら、「金 壱萬伍阡円(または圓)」となります。 - 封筒の裏の左下に、贈り主の住所・氏名を記載します。一般的な封書の書き方と同じで構いません。
中包みには黒の筆ペンかサインペンを用いる
不祝儀袋の表書きは、お通夜と葬儀のみ薄墨と前述しましたが、中包みは黒の筆ペンかサインペンを使います。黒ではっきり書かれていたほうが、香典返しなどをお贈りする際にお相手も安心です。