RINGBELL
リンベル「極み」シリーズ開発秘話
「極み」のこれまでとこれから
リンベルのプライベートブランドである『日本の極み』と『山形の極み』。
その誕生秘話から今後の展開について、リンベル代表の東海林秀典と
極みシリーズのパッケージデザインをトータルに手掛けている中山ダイスケ氏にお話を伺いました。
たった1本のりんごジュースとの出会いから、
『山形の極み』、そして『日本の極み』が生まれた
−『山形の極み』、そして『日本の極み』。この2つの極みシリーズは、どういう経緯で誕生したのでしょうか?
東海林秀典(以下、東海林)最初は、山形県産果実を絞って作ったストレート果汁100パーセントのジュースに出会ったことがきっかけでした。このりんごジュースが、本当に本当に美味しくて。ただ、通販で缶ジュースは売れないという声もありました。しかし、こんな芳醇な香りと自然な甘さでありながらも、香料や酸化防止剤無添加にこだわっている贅沢なジュースをこれまで私は飲んだことがなかった。これは日本の食文化レベルの高さを象徴する商品であることは間違いないと確信していたので、なんとしても全国のお客様に届けたいと思ったのです。すぐにメーカーの社長に会いに行ってお願いをして、商談が進むにつれ、この美味しさを伝えられるデザインを考えよう!という話になったのです。その時に、このジュースの製造元である会社の社長が、2007年より東北芸術工科大学の教授(現在は同大学の学長を務める)としても活躍されていた中山ダイスケ氏を紹介してくれました。
中山ダイスケ氏(以下、中山)最初に東海林社長とお会いさせていただいた時から、魅力溢れる食を食卓に届けたい、そしてその豊かさと活力で日本を元気にしたいという熱い思いに心打たれました。それからも東海林社長と直接やり取りをさせていただき、極みシリーズのパッケージデザインをさせてもらっています。まず東海林社長の故郷でもある山形県産の農畜産物をブランド化した『山形の極み』が2015年に始まり、2017年にはその取り組みが日本全国に広がり『日本の極み』シリーズが誕生しましたね。
一番美味しいタイミングで全国に届ける。
そしてその魅力を最大限に伝えるための
デザインを開発
東海林これまで世の中に流通している商品の多くは、数に限りがあるから販売が難しいとか、賞味期限を長くするために添加物が加えられていたりとか、本当に美味しいものが紹介されていないのでは?という疑問がありました。このジュースに出会い、そして極みというブランドを立ち上げるにあたって、そうした制約ではなく最高の状態で本当に美味しいものを届けることに挑戦したいと思ったんです。だから、美味しいものを見つけると取引の交渉と同時にデザイン制作もスタートをお願いしています。
中山そうですね、取り扱う商品が決定してはじめてデザインに取り掛かることが一般的です。でも、極みシリーズは美味しいものの旬を大切にしているから、商談と同時にデザインに取り組まないと間に合いません。クオリティに加え、スピードも求められるのです。しかし、東海林社長も筆頭にした最小限メンバーのプロジェクトなので、やり取りに無駄な時間がかからない。ミニマムメンバーでリズムの良いレスポンスで、短期間でデザインをブラッシュアップさせていくのは毎回緊張感もあります。
東海林果物など旬の状態で味わってもらえるように生産者から直送という方法を選んでいることも、極みシリーズの特長です。いま現在、極みシリーズの約半分ほどが直送商品です。ただ生産者から発送となるとパッケージにどうしても入れなくてはいけない表示があったり、箱などは規定サイズに限りがあるなどデザインにおける制約も多いです。そうしたことを前向きに踏まえて、中山さんにはデザインしていただいていて、生産者の方々からも好評の声をいただいています。
中山極みシリーズのデザインにおいては高級感や上質さ、上品さをさりげなく感じさせつつも、派手にしないことを念頭においています。取り扱っている商品自体が安心安全・ナチュラルな美味しさをコンセプトにしているので、デザインが主張しすぎるのは合わないと思ったからです。ですので、色は使いすぎず、できるだけ少ない情報で商品の良さがイメージできるパッケージを提案するように心がけています。もちろん商談と同時のデザイン制作開始なので、デザイン途中の段階でも試食で実際の味とデザインのトーンが異なる場合もありますが、東海林社長をはじめ極みシリーズの開発スタッフが味の表現や作り手である生産者さんの話、そして産地の風景などさまざまな情報を事細かに共有してくれるのでそこからイメージが広がっていきます。
東海林極みシリーズのデザインは、日本パッケージデザイン大賞に入賞したものも多く、「熊本県植木町産 大将すいか」のパッケージは2017年の金賞を受賞しました。極みシリーズの全商品をオリジナルデザインの仕様にすると決めて、アートディレクターとして中山さんにご協力いただけるというご縁によってこそ為し得たことだと思っています。
中山僕の方こそ、光栄に思います。まさか「熊本県植木町産 大将すいか」のパッケージで金賞をいただけるとは思っていなかったので驚きもありましたね。デザインに関しては自由にさせていただいていることも多い反面、提案時に東海林社長から思ってもみなかったところを指摘されたりと、そのやり取りに学ぶことも多いです。
日本の食卓を支えるだけでなく、
世界に美味しさを届けるために
極みシリーズが目指すべき未来とは?
東海林例えば、極みシリーズで取り扱いのあるぶどうを見ても、産地は山形、山梨、長野、岡山とさまざまです。その土地ごとに味の魅力、美味しさの季節があります。このバリエーション豊かな美味しさは、日本の魅力でもあり特徴です。だからこそ、これをより知ってもらうために海外へ配送できる仕組み作りがまず一つ目の課題です。すでに香港での販売は、AIR GIFT JAPANという名前でスタートしています。もう一つは、極みシリーズは商品自体が高級であることに加え、どうしてもハレの日の贈り物需要がメインになりがちです。しかし、この安心安全な美味しさを日々の食卓でも楽しんでいただきたい。そこで、少人数の家庭にも便利な小分けにするなどして、日常のちょっと贅沢な商品として展開できないかと考えています。
中山私もこの極みシリーズに携わらせてもらうまでは、リンベルさんは結婚式の引き出物ギフトカタログなどハレの日のギフトイメージが強かったです。しかし本当に美味しいものが膨大なラインナップで揃っていて、温めるだけで食べられるなど簡単調理の商品も多いので、より多くの家庭の食卓で喜ばれるのではないでしょうか。
東海林まだまだ日本国内の商品開発も広がっていくでしょうし、世界に視野を向けると、私も長生きしないと!と気合いが入ります。まだまだ日本の美味しいを届けていくことに、可能性と挑戦の可能性を感じています。
中山ダイスケ(なかやま・だいすけ)
アーティスト、アートディレクター。株式会社ダイコン代表。東北芸術工科大学学長。コミュニケーションを主題に多様なインスタレーション作品を発表し、現代美術の新旗手として国内外から注目を集める。1997年より6年間NYを拠点に活動。1998年台北、2000年光州、リヨン(フランス)ビエンナーレの日本代表に選出される。舞台美術や店舗空間など、デザインや企画で参画したプロジェクトも多く、常にアートとデザインを行き来している。
東海林 秀典(とうかいりん・ひでのり)
1947年 山形県生まれ。リンベル株式会社代表取締役社長。山形大学工学部化学工学科大学院修士課程修了。三菱重工横浜造船所にてプラントエンジニアとして活躍後、家業の家庭金物卸問屋へ。1987年リンベル株式会社を設立するとともに現職。