引越し後にまず済ませておきたいのが、ご近所への挨拶です。お渡しする品物に「のし」を付けるべきなのか、付けなくても問題ないのか、迷った経験がある方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、引越しの挨拶で渡す品物にのしは付けるべきかどうか、のしの書き方や使い分けのマナーについて詳しく解説していきます。
そもそも引越しの挨拶は必要?
一昔前は、引越しとなれば新居・旧居いずれのご近所にもご挨拶に行ったものでした。しかし、近年(特に都心部)では防犯意識の高まりから、女性の一人暮らしや単身者向け賃貸ではあえて引越し挨拶をしない方も少なくありません。そうした面を考慮すると、引越しの挨拶は「必ずすべきこと」ではなくなってきました。
とはいえ、挨拶まわりはご近所の人となりや雰囲気を知るよい機会であり、顔を見知っておくことで安心できるという面もあります。地域の交流(町内会の有無など)や、家族構成(小さい子どもやペットがいるなど)を踏まえて、引越しの挨拶をするかどうかを検討しましょう。
引越し挨拶をするエリア
引越しの挨拶は、今後関わりのありそうな範囲を中心に行います。品物を準備する都合もあるので、早めに挨拶する範囲を決めておきましょう。
集合住宅の場合は顔を合わせやすい「両隣の部屋」、生活音が響きやすい「真上・真下の部屋」となります。一戸建ての場合は「両隣」「向かいの3軒」「真後ろ」に挨拶するのが一般的です。
引越しの挨拶で渡す品物にのしは付けるべき?
「のし」があると、より丁寧な印象に
品物にのしを付けると、より丁寧な印象になります。例えば、家族で移住する、分譲マンションや一戸建てに住むなど、長く居住することを前提としているならば、のしをつけてご挨拶すると好印象を持っていただけます。
一方で、単身者向け住宅の場合は、防犯面や住民の入れ替わりが頻繁であることから、引越し挨拶をすること自体が減っていますので、のしがなくとも挨拶と品があれば気持ちは伝わるでしょう。迷ったら仲介した不動産屋に相談してみてください。
のしの書き方
水引の種類
引越し挨拶の品物にのしをつける場合は、何度あってもよい出来事にかける「紅白・蝶結び」の水引を選びます。贈答品を扱うお店ならお任せしても大丈夫だと思われますが、間違ったのしがかかっていないかご自身で最終確認をしておくと安心です。
表書きについて
のしの表書きは、新居では「御挨拶(または『ご挨拶』」、旧居では「御礼」とします。「粗品」も間違いではありませんが、個人間の引越し挨拶ではあまり使われなくなっています。
外のしが一般的
のしのかけかたには、のしをかけてから包装紙で包む「内のし」と、のしが一番外側にくる「外のし」があります。引越しのご挨拶では、引越しの挨拶であることが分かりやすい「外のし」を選びましょう。
のしに記載する名前の書き方
新居で表札を掲げる場合は、表札が連名ならばのしも連名にし、契約者のみならば契約者のみで問題ありません。ただし、防犯面の問題で表札を掲げない・一人暮らしであるといった場合には、名前を記載しなくても失礼にはあたりません。ファミリー層の多い住宅地では、のしに名前があったほうがお相手も安心するというメリットがありますので、状況によって使い分けるといいでしょう。
同棲の場合の名前の書き方
いずれどちらかの姓となる結婚を前提とした同棲の場合は、契約者の姓だけで構いません。結婚を前提としない同棲の場合は、両名で記載した方がベターです。どちらにしろ、先に述べたように防犯面や住環境によって記載する・しないを検討しましょう。
引越しの挨拶品にのしを付けるときのマナー
弔事掛けにならないように注意する
のしの両端が品物の裏面で交わる場合には、「どちらの端を上にするか」にも注意が必要です。引越し挨拶の場合は、品物を裏返して向かって右側ののし端が上になる(右前)ように重ねます。これを「慶事掛け」といいます。
ちなみに、向かって左側ののし端が上になる(左前)は、「弔事掛け」といい、お悔やみごとの品に用いられます。
生ものを贈る場合はのしを付けない
次の項で解説しますが、引越しの挨拶品は、消耗品や賞味期限の長い食品が主流です。したがって、生ものをお渡しすることはあまりないと思われますが、もしも生ものを選ぶ場合は、のし紙の右肩にある飾り(本来、この装飾を熨斗(のし)と呼びます)がない、水引だけが入った掛け紙を使いましょう。
引越しの挨拶に適した品物を選ぶポイント! 相場とおすすめの品物について
お相手も気軽に受け取れる1,000円前後の品物が相場
引越しの挨拶に持参する品物の金額は、1,000円前後が相場です。お相手が気兼ねなく受け取れる範囲で選んでみてください。
消耗品や日持ちする食品から、好みが分かれにくいものを
品物は、タオル、ふきん、洗剤などの消耗品や、日持ちがするお菓子が無難です。地域指定のごみ袋も定番品となっています。味や色・香りが強いもの、キャラクター物など好みの分かれるものは避けましょう。
引越しの挨拶をするタイミング
引越し当日はやることが多く、搬入の音や業者の出入りがあります。引越し挨拶は「バタバタしてご迷惑をおかけします」という意味もあるため、入居よりも前にできればベストですが、引越し当日か翌日には挨拶しておきましょう。遅くとも引越し後1週間以内となります。
ご飯時を避けて、日暮れ前に挨拶する
挨拶をする時間帯は早朝や夜遅くを避けた日中がベストです。食事の時間帯も極力避けます。顔合わせを兼ねて、できるだけ同居人を連れて挨拶したいところですが、お相手に無理のない時間帯に訪れるほうが優先されます。
お相手が不在だったときはどうする?
挨拶にうかがった際に相手が不在だった場合は、曜日や時間帯を変えて再度訪問してみましょう。この場合も前述したように早朝や日暮れ後は避けて訪問します。数回訪問してもお会いできないときには、挨拶の品をドアノブにかけたり、郵便受けに入れてお渡しするのも一つの手段です。その際には、引越ししてきたことを伝える挨拶状を添えましょう。
挨拶の内容について
引越し挨拶の内容としては、「自己紹介」「引越した場所(隣なのか、階下なのかなど)」「引越し日」「搬入の音などでご迷惑をかける(かけた)ことへのお詫び」などです。加えて、赤ちゃん・介護が必要な人・ペットと同居するならば、その存在もお伝えしておくと安心です。
引越しのご挨拶へのお返しは不要
引越しの際にお渡しする品物には、ご挨拶の意味と引越しの搬入などでお騒がせすることへのお詫びの気持ちも含まれていますので、特別な事情がない限りお返しは不要です。後日お会いした際に、ご挨拶への感謝を伝えるとよいでしょう。