ご先祖様の魂が帰ってくると考えられているお盆には、ご先祖にお供えをして、おなじものを私たちもいただくという習慣があります。実はお盆に供される「お供え」の料理は、地域によってさまざま。ここでは、お盆の行事食であるお供えについて、よくある料理や珍しいものなどを紹介します。
お盆の行事食にあたる「お供え」
「仏壇にお供えした食べ物と同じものを食べる」習慣は全国的
お盆の行事食は各地でさまざまなものが見られます。何を食べるかよりも、むしろ「仏壇に食べ物のお供えをして、家族も同じものを食べる(仏様のお下がりではなく別に用意する)」という習慣の方が、全国的に共通しているようです。
よくあるメニューは「そうめん」、「精進揚げ」、「おはぎ・団子」
各地のお供えの中でも、よく見られるのが「そうめん」や「精進揚げ」、「おはぎ・団子」です。そうめんは精霊牛の手綱になぞらえられており、おはぎの小豆の赤い色には魔除けの意味があります。団子は先祖の霊が帰りにお土産として持っていく、などといった由来があるようです。
また、仏教では動物の殺生を禁じ、肉魚を用いない「精進料理」を食べることから、お盆の時期に精進料理の一種であるこれらの料理が食べられてきたという説もあります。
各地に見られる「お盆のお供え」
秋田県では「赤ずし」、長野県では「天ぷら饅頭」など
秋田県北部では、もち米とすし酢、赤じその塩漬け、漬物などを発酵させて作る「赤ずし」がお盆に食べられています。さっぱりとして、暑い夏にも食が進む逸品です。
長野県中部では、饅頭の上から天ぷら粉をつけて揚げる「天ぷら饅頭」が、お盆のお供えの定番です。
大分県では「タラの乾物」、沖縄県では「酢の物」など
大分県の日田・玖珠地方でお盆に食べられている「たらおさ」は、タラのえらと胃を干したもの。その昔、内陸地方で海から遠かったこの地方では、海産物は貴重なごちそうでした。そのため、精進料理が基本のお盆であっても、たらおさの煮しめは欠かせない料理となっています。
沖縄県のお盆料理「ウサチ」は、酢の物・和え物のこと。沖縄のお供え物「ウサギムン」の副菜で、ゴーヤやモヤシなど、家庭によってさまざまな材料で作られています。
お盆の食事は「親族が集まる席のごちそう」
「親族が集まる席のごちそう」として、堅苦しく考えずに
昔ながらのお盆の行事食は、そもそもお供えであったり、仏教に根ざした精進料理だったり、お盆に関わるいわれがあったりして興味深いもの。ただ、現在ではお盆に親族が集まる席のごちそうとして、堅苦しく考えずに出されていることも多いようです。にぎやかな食事を彩る話題のひとつとして、楽しんでみるのもいいかもしれません。