お中元やお歳暮などの季節のごあいさつは、個人的に親しい間柄の方だけでなく、ビジネス上でお付き合いのあるお相手にも贈ることがあります。そこで今回は、個人事業主の方も含めた、お中元・お歳暮の経費の考え方や注意点をご紹介。贈ってはいけない方もいますので、贈り先リストをチェックしておきましょう。
お中元・お歳暮は経費になる? 勘定科目・仕分けの方法
事業上の「経費」とは、「業務上で発生する費用」を指しています。これに照らし合わせると、お中元やお歳暮を取引先へお贈りすることは日本の習慣であり、業務を円滑にするために必要と解釈できるので、経費として計上できます。
お中元・お歳暮にかかる費用は、原則として勘定科目「接待交際費」で仕分けします。会社や業務を知ってもらうためのお中元・お歳暮は、「広告宣伝費」とするケースもあります。
ただし、“資本金が1億円以下の法人”と“資本金1億円以上の法人”で、それぞれ接待交際費に上限が決められているので注意が必要です。一方、個人事業主の場合、接待交際費は全額計上が可能で損金計上もできます。
経費とする際に注意したいのが、そのお中元・お歳暮が「業務を円滑にするために必要か否か」というところです。「接待交際費」にできるのは、得意先・取引先・仕事でお世話になった方だけとおぼえておきましょう。友人・知人・恩師など、仕事で関わりのないお相手へのお中元・お歳暮は、経費計上はできません。
接待交際費の仕分けの例
例)3万円分の品物を現金で購入し、得意先にお中元として配った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
接待交際費 | 30,000 | 現金 | 30,000 |
お中元・お歳暮を経費にする際の注意
お中元やお歳暮を経費にするには、いくつかの注意点があります。あとあとの面倒を避けるために、以下をおさえておきましょう。
お中元・お歳暮の贈り先リストを保存しておく
経費に計上できるのは仕事上必要な費用のみです。したがって、お中元・お歳暮のうち「接待交際費」に計上できるのは、ビジネス上のお相手のみとなります。
プライベートで贈ったお中元・お歳暮と混合していないことを示すため、接待交際費で計上した送り先リストを用意しておきましょう。宅配の送り状や領収書をまとめたものでもOKです。
プライベートな出費を経費にすると、税金が上乗せになることも
取引のないお相手や、友人・知人といったプライベートな間柄など、ビジネスと関係のない方へのお中元・お歳暮を経費計上すると、税務署から指摘されれば重加算税を課せられる罰則があります。心配な場合や、線引きがわからない場合は、税理士などに相談するのがおすすめです。
お中元・お歳暮にかかった「送料・交通費」も経費になる
お中元・お歳暮にかかった送料や、直接訪問してお渡しした際の交通費も経費になります。
「接待交際費」に計上したお中元・お歳暮の場合、送料・交通費も同じく「接待交際費」で処理して問題ありません。「広告宣伝費」で扱った場合、送料・交通費は同じく「広告宣伝費」に入れても、「通信費」「旅費交通費」に入れても構いません。
お中元を贈ってはいけないお相手
お中元・お歳暮には、贈ってはいけないお相手がいます。ビジネス上のお付き合いで、特に注意したいお相手を解説します。
「収賄」と捉えられかねないお相手
政治家や国家公務員、地方公務員、裁判官、警察官へのお中元・お歳暮は、お互いの関係がビジネス上であれプライペートであれ、「収賄」と捉えられてしまいます。また、公務員が贈答品を受け取ることは倫理規定によって禁止されています。
また、医師や病院職員なども、贈った人を贔屓(ひいき)するのでは?と、不信感を持たれないよう受取拒否をする病院があります。
お相手の企業方針によるもの
一般の企業でも、会社の方針としてお中元・お歳暮も含めた贈り物全般を受け取らないと決めている場合があります。こうしたケースでは無理に贈るのは避けましょう。あらかじめお届けに都合のいい日時を確認するなどして、さりげなく相手から「受け取れない」と聞き出せるとスマートです。
年末のあいさつで贈るノベルティは「宣伝広告費」
年末年始のあいさつ周りで、会社名やロゴの入ったカレンダーや手帳を配布することがありますが、この場合は対象が不特定多数なので「接待交際費」には当たりません。その代わり、会社を知ってもらう宣伝の目的があるので「広告宣伝費」として経費の計上ができます。