海外から取り入れられたクリスマスやハロウィンの飾りつけとは違って、日本の行事の飾りつけは、その仕舞い方までを含めて行事になっていることがよくあります。正月の鏡餅を下ろしていただく「鏡開き」もそのひとつです。
そもそも鏡開きとは?
1月11日に、正月の鏡餅を下ろし、食べる行事
鏡開きとは、1月11日(地域によって異なる)に年末から飾っていた正月の鏡餅を下ろし(片付け)て、その餅を食べる行事です。鏡餅は飾られている間に水分が飛んで固くなっていますし、そのままでは調理しにくいほど大きいものも多々ありますから、木槌などを使って細かくしてからいただきます。
昔の武家では神様に供えたものに刃を立てるのは縁起が悪いということで、餅を細かくするのに刃物は使いませんでした。
ただし、餅にはカビが生えていることも少なくないですから、今では出刃包丁などを使ってカビの生えた部分を削り取り、切り分けることもあります。
地域ごとの鏡開きの時期
鏡開きの時期は、地域によって異なります。関東や北海道、九州などでは1月11日に、関西では1月15〜20日に開催するケースが多く見られます。
細かくした鏡餅はお雑煮やお汁粉に
鏡開きでは、神様が宿っていた鏡餅を食べることで、その年を無病息災で過ごせる力を分けていただくとされています。
食べ方に厳密な決まりはありませんが、水分が飛んで固くなっているため、昔ながらの鏡開きではお雑煮やお汁粉など、お餅を煮て食べることが多いようです。最近では、水に浸けてレンジで加熱するなど、水分の飛んだ餅を柔らかくする方法もさまざまなものが見られますから、試してみても良いでしょう。
鏡開きの由来とは?
もともとは1月20日に行われていた
鏡開きは、もともと現在の1月11日ではなく、1月20日に行われていました。これが江戸時代に、現在の1月11日に行われるようになったとされます。
といっても、3週間も飾っておくと鏡餅のカビがひどくなるから……というわけではないようです。
将軍の忌日を避けた
20日は江戸幕府の三代将軍、徳川家光の忌日(いわゆる月命日)にあたります。そのため、江戸時代以降の鏡開きは20日を避けて11日に行われるようになったといわれています。また、11日は商家の仕事始めにあたる日でもあったため、武家もこれに合わせたのではないかという説もあります。
武家の男性は鎧兜に供えた餅を、女性は鏡台に供えた餅を開いていた
現代では、鏡餅は床の間や神棚、リビングや玄関などに飾ることが多いようです。もともと武家では、こうした場所に加えて鎧兜や鏡台にも鏡餅が供えられ、鏡開きの際に男性は鎧兜に供えた餅を、女性は鏡台に供えた餅を開いて食べたと言われます。
仕事用の机や子どもの学習机に鏡餅を飾っているお宅では、こうした“自分の鏡餅を開く”習慣も取り入れてみるといいかもしれません。
鏡開きの正しいやり方・手順
鏡開きには2つの意味があります。一つがお正月に供えた鏡餅を食べる行事、もう一つが樽酒のふたを木槌で開ける儀式です。樽酒のふたを木槌で開ける儀式は、結婚式や会社の記念行事などで行われています。基本的な手順は下記のとおりです。
- 樽酒を結んだ太い縄をカッターなどで切り、結び目を取り除く
- 外した蓋を被せておく
- 準備ができたら音頭に合わせ、掛け声を上げながら小槌で蓋を叩く
- 網杓子(あみじゃくし)などで中のゴミをすくう
- お酒を参加者へ配る
結婚式の鏡開きとは?
結婚式の鏡開きとは、先述した酒樽の蓋をお餅に見立てて木槌で開封する演出のことです。この演出には、夫婦円満や子孫繁栄を願う意味が込められています。結婚式の参加者にとっても、喜び・一体感を与える儀式となっています。