お盆には、仏壇前に精霊棚と呼ばれる棚を用意する慣習があります。これは先祖の精霊を迎えるためのもので、位牌を置き、季節の野菜や果物、故人の好物などが供えられます。このお供えのひとつが精霊馬です。
ちょっと変わったお供え物、精霊馬(しょうりょううま)とは?
早く家へ来るための「きゅうりの馬」、ゆっくり帰るための「ナスの牛」
精霊馬は“馬”と書きますが、馬だけではなく牛とあわせて2頭で1組です。主にきゅうりを材料にして作られる馬は、足が速いことから「先祖の霊が早く家へ来てくれるように」との願いがあります。一方、主にナスを材料にして作られる牛は、のんびりと歩むことから「先祖の霊がゆっくり帰っていけるように」との願いが込められているといわれます。
地域によっては、迎え盆の8月(7月)13日には精霊馬を家の中へ向け、送り盆の16日には家の外へ向けることもあるようです。
浄土真宗など、精霊馬をお供えする慣習がない宗派や地域もある
全国的に見られる精霊棚や精霊馬の慣習ですが、飾り方やお供えの内容は宗派や地域によって異なります。中でも浄土真宗は、精霊棚を設ける慣習がありません。浄土真宗では、死後はすぐに極楽浄土へ生まれ変わるという教えがあり、先祖の霊が帰ってくることはないと考えられているためです。
最新型も人気!? 精霊馬の作り方・しまい方
細い方を頭に見立て、自立できるように足をつけていく
ごく一般的な精霊馬の作り方をご紹介しましょう。きゅうり・ナスいずれも1本まるごと使います。きゅうりなら両端のうち細い方、ナスはヘタのついている方を頭に見立て、おがら(皮を剥いた麻の茎)を適当な長さに切りそろえたものを足に見立てて、自立できるようにバランスよく4本差していきましょう。おがらの代わりに、割りばしや爪楊枝を用いることも多いようです。
SNSでバイク風や自動車風の凝った精霊馬が話題になることも
最近は飾り切りを行い、より馬や牛に似せた精霊馬を作る方がいたり、故人の好きだった乗り物を象り、「馬よりも早く来られるように」といった願いを込めて、バイクや車に見立てた精霊馬を作る方もいたりするようです。
SNSでは、手先の器用な人が飾り切りを駆使して作った“作品”が話題になっています。ただし、こうした精霊馬が良しとされない状況も考えられますので、実際にお供えする場合は慎重にしましょう。
しまった後は食べたりせずに丁寧に処分を
お盆が明け、精霊棚をしまう際には役割を果たした精霊馬も処分することになります。昔は川へ流したり、土へ埋めたりして丁寧に扱っていたため、食べたり、そのまま無造作に捨てたりするのは避けたいところです。お清めの塩を振り、白い紙に包んでゴミに出すか、菩提寺でのお焚き上げに加えてもらうとよいでしょう。