もともとは地域の伝統的なひな飾りであったつるし飾り。近年は、伝統的なつるし飾りをベースにしたアレンジ版つるし飾りも登場し、インテリア雑貨や、布小物手芸のモチーフとして人気があるようです。
つるし飾りとは?
糸に布の人形などをつるしてひな人形と共に飾る
つるし飾りとはひな祭りの飾りの一種で、後述する福岡県柳川市、静岡県東伊豆町稲取、山形県酒田市などに伝わっています。飾り方や形にはさまざまありますが、いずれも布の人形やまり、縁起物などをかたどった小物を、糸でモビールやベッドメリーのようにつるします。
日本三大つるし雛に見るその由来
福岡県柳川市「さげもん」
色鮮やかな糸で巻き上げて模様をつけた手まり「柳川まり」と、縁起のいい鶴やうさぎ、ひよこ、這い子人形などの布細工とを糸でつるした飾りです。江戸時代末期から、女の子の誕生を祝って母親や祖母、親戚たちが作ってきたものだといいます。
柳川市ではひな祭りの時期、観光施設や店舗に「さげもん」を飾り付けて訪れる人の目を楽しませる「さげもんめぐり」が実施されています。
静岡県東伊豆町稲取「雛のつるし飾り」
長寿の象徴「桃」、魔除けの「猿っ子」、薬袋香袋を模した「三角」など50種の細工を糸でつるすもので、江戸時代、ひな人形をそろえられない庶民の家のひな飾りとして手作りされてきました。現在は、ひな壇の両脇に飾られることが多くなっています。稲取地区にある稲取温泉では、ひな祭りの時期に吊るし飾りの展示やさまざまなイベントを行う「雛(ひな)のつるし飾りまつり」が実施されています。
山形県酒田市「傘福」
傘の先に幕をめぐらせ、その中に魔除けの「ひょうたん」、災いが去る「猿っ子」、花のようにかわいい子が育つよう願いを込めた「花」などの飾りをつるし、神社仏閣へ奉納したものです。江戸時代、北前船を通じて京都から料亭文化などと共に伝わったと見られています。
酒田を代表する料亭で、国の登録有形文化財でもある「山王くらぶ」では、傘福の常設展示や販売、製作体験が行われており、ひな祭りの時期には特別展示も実施されています。
華やかなつるし飾りで楽しいひな祭りを
伝統的なつるし飾りの展示を観に行ったり、手作りや購入したつるし飾りを自宅に飾ったり、さまざまな方法でひな祭りを盛り上げてくれます。段飾りよりも場所を取らず、手軽に華やかさを楽しめるつるし飾りで、楽しいひな祭りを過ごしてみてはいかがでしょうか。