一年のうちで最も月が美しいとされるのが、「秋の十五夜」。「中秋の名月」とも呼ばれ、一般的にお月見といえば十五夜のお月見を指すことが多いようです。しかし、実はお月見は9月・10月・11月のなかで3日間あることをご存知でしょうか? ここでは、お月見の日やそれぞれの意味、また、食べ物やお供え物についてご紹介します。
お月見の日と、月を眺めることの意味
お月見にふさわしい日は十五夜ばかりではなく、十三夜、十日夜(とおかんや、とおかや)もあります。それぞれの意味を見ていきましょう。
十五夜:八月十五夜
一年のうちで最も月が美しいとされるのが、旧暦8月15日の夜の月である「秋の十五夜」。「中秋の名月」とも呼ばれるこの日に、お月見をするのが一般的です。現代の暦では、おおよそ9月中旬から10月上旬にあたり、2019年は9月13日が十五夜の日です。
旧暦では7・8・9月が秋にあたり、それぞれを初秋・仲秋・晩秋と呼んでいます。「仲秋」は8月全体を指しますが、「中秋の名月」の「中秋」は秋全体の真ん中、つまり旧暦8月15日のみを指すものです。長雨や台風が続いた7月が過ぎ、空気の澄んだ8月の中日は、とても美しい月が見えたことでしょう。
お月見はもともと中国から伝わったもので、平安貴族の間で風雅な宴として流行し、やがて庶民へと広がっていきました。その後、江戸時代には秋の実りを兼ねるようになったことで、特にイモ類の収穫を祝うことから「芋名月(いもめいげつ)」とも呼ばれています。
十三夜:九月十三夜
「十三夜」は旧暦9月13日のお月見のことで、十五夜の次に美しい月が見ることができるといわれています。本来、十五夜と十三夜はセットで行われる行事で、どちらか一方しか行わないことを「片見月」「片月見」と呼んで、縁起が良くないこととされています。
先の十五夜は中国伝来ですが、十三夜は日本独自の風習です。こちらも収穫祝いを兼ねており、栗や豆類の時期であることから「栗名月」「豆名月」と呼ばれています。
十日夜:十月十夜
「十日夜(とおかんや)」は、旧暦10月10日に行われる東日本を中心とした収穫祭です。お月見がメインではないため、月齢はあまり気にせずに11月10日に祭りを行うことが多いようです。西日本では、旧暦10月の亥の子の日に行う「亥の子」という類似行事があります。
稲の収穫を祝うこの日の祭りは、地方によって内容が異なり、餅つきをしたり、かかしと一緒にお月見をしたり(かかしあげ)、刈り取った稲を束ねて地面を叩いたり(わら鉄砲、わらづと)、さまざまな風習があります。
お月見の日、イコール満月とは限らない
「お月見といえば満月」と思われる方も多いのですが、実はそうとは限りません。旧暦では各月の1日が月の見えない新月の日で、次の新月までを1カ月として定められています。
地球を周る月の軌道は楕円形をしており、新月から満月の間はおよそ14〜15日間と多少のブレがあります。したがって旧暦15日であっても、必ず満月にはなるわけではないというわけです。
お月見の食べ物・お供え物
お月見には、「美しい月を愛でる」だけでなく、収穫に感謝する意味合いもあります。したがって、月や収穫物にちなんだものが、お月見の食べ物やお供え物に用いられています。
お月見の定番「月見団子」は、文字通り丸いお団子を月に見立てたもの。しかし、丸い形のお団子は亡くなった方のお供え物「枕団子」に通じるため、月見団子はほんの少しつぶすと良いとされています。
もうひとつの定番である「ススキ」は、茎の空洞に神様が宿るとも、鋭い切り口が魔除けになるともいわれます。お月見にススキを供えると、災いや邪気を遠ざけて、翌年も豊作になると信じられてきました。地域によっては、お月見に使ったススキを、軒先に吊って魔除けとする風習が残っています。
そのほか、十五夜には里芋を、十三夜は栗や豆、十日夜は米や餅など、その時期の収穫物を供えます。お供え物は、お供えが終わったらぜひいただきましょう。感謝を込めてお供えしたあと、すぐにおろして食べても大丈夫です。お供えしたものを食べることによって、月や神様の力や恩恵を心身に宿すことにつながります。
月が見えないお月見も風流
十五夜・十三夜の両方で月が見られると縁起が良いとされています。しかし、悪天候で月が隠れてしまっていても乙なものです。中秋の夜に月が隠れると「無月(むげつ)」、雨が降ると「雨月(うげつ)」と呼ばれ、風情のあることとされています。