
葬儀において喪主がやらなくてはいけない役割の一つが「葬儀の挨拶」です。実際の葬儀の場では、喪主が挨拶する場面が何度かあります。事前に挨拶文を用意しておけば、滞りなく葬儀を執り行えるでしょう。
今回は、葬儀で喪主がおこなう挨拶の例文をご紹介します。挨拶時のポイントも解説しますので、参考にしてください。
葬儀で喪主が挨拶をするタイミングは大きく3つ
葬儀で、喪主が参列者の前へ出て挨拶をするタイミングは、概ね下記の3つがあります。また前へ出る挨拶とは別に、僧侶が到着した後に控室を訪ねて挨拶をしたり、参列者を出迎える挨拶をしたりすることもありますが、主に弔いへの謝意を伝えるものですので、改めて準備をするまではないでしょう。
①通夜
通夜では、僧侶による読経と、喪家・参列者の焼香が一通り済んだ後に喪主挨拶を行うのが一般的です。喪主が立って参列者全体へ向き直り、短い挨拶をします。
②告別式
告別式では、参列者の焼香や献花などが済んだ後、出棺前に喪主挨拶を行うのが一般的です。通夜同様、喪主が立って参列者全体へ向き直り、短い挨拶をします。
③精進落とし
精進落としの会食の始まりと終わりにも、喪主が立って簡単な挨拶を行います。
特に始まりの挨拶では、故人に杯をささげる「献杯(けんぱい)」の声かけをきっかけに会食が始められることもあります。
宴会やパーティの「乾杯」と似た用語・流れですが、乾杯はお祝いの声かけです。献杯ではグラスを合わせて音をさせたり、杯を飲み干したりすることもしないのが一般的ですから、くれぐれも間違えないようにしましょう。
喪主挨拶の例文
それでは、葬儀の場面ごとに喪主挨拶の内容や、例文を見てみましょう。
通夜での挨拶
通夜の挨拶は、下記のような構成を参考にするとよいでしょう。
参列くださった方への謝意
雨天などの場合は「お足元の悪い中」と参列者を思いやる言葉を加えてもよいでしょう。
故人が生前お世話になったお礼
この「お礼」については、故人に代わって行う旨を言い添えることもあります。
告別式の案内
こうした場での挨拶は、悲しみから言葉に詰まることも珍しくありませんが、参列者にとっては重要な情報ですので、できるだけはっきり漏れなく伝えるようにしましょう。
告別式での挨拶
告別式の挨拶は、下記のような構成を参考にするとよいでしょう。
参列や生前の厚意への謝辞
通夜の挨拶と概ね同様で構いません。「参列者の弔いには故人も感謝しているはず」といった風に、故人の気持ちを代弁するような言い方をすることもあります。
故人の亡くなる前の様子、生前のエピソードなど
故人への思いが募ってあれもこれもと考えがちではありますが、挨拶では1~2つ程度のエピソードを、簡単に話すくらいがよいでしょう。
遺族との今後のお付き合いのお願い
家族ぐるみでお付き合いしている親戚などには、故人の亡き後もお世話になることがあるでしょう。快くお付き合いを続けていただけるよう、ひとこと添えておきましょう。
精進落としでの挨拶
精進落としでは、会食を始める際と、食事が終わり、帰り支度を促す際に喪主挨拶を行うのが一般的です。
始めの挨拶では、杯を持って葬儀を無事に終了できたことに対する感謝と、故人を偲びながら食事をしてほしい旨を簡単に述べ、献杯する場合は最後に「献杯」の声かけをしましょう。
終わりの挨拶でも、再び参列への謝意を述べ、今後のお付き合いをお願いして、「お開き(会食を終えること)」とする旨を伝えます。四十九日など今後の法要の予定がはっきりしている場合は、挨拶の中で伝えてもよいでしょう。
喪主挨拶のポイント・マナー
ここでは、喪主挨拶のポイント・マナーを見ていきましょう。
忌み言葉を避ける
慶弔の挨拶に適さないいわれのある言葉は「忌み言葉」と呼ばれます。葬儀など弔事の主な忌み言葉には次のようなものが挙げられます。
重ね言葉
「ますます」、「重ね重ね」などは不幸が重なることを連想させます。
「死」や「生」、「苦痛」をネガティブに連想させる言葉
「死」や「苦」のつく言葉、数字の4と9、「生きていたころ」、「枯れる」、「終わる」、「絶える」、「消える」などの言葉は避けるようにしましょう。
『死』は「永眠」、「逝去」、「他界」、『急死』は「急逝」、「突然のこと」、『生きていたころ』は「生前」、「元気だったころ」など、言い換えの語彙をいくつか覚えておきたいところです。もし心配であれば、挨拶を聞き慣れている斎場の担当者などに、内容を確認してもらえないか頼んでみましょう。
長々と話さないようにする
喪主の挨拶は長くても3分程度に収めるのがおすすめです。あまりにそっけないと寂しく感じられるかもしれませんが、「立派に務めよう」「故人のいい話を聞かせたい」と気負った挨拶は、聞き手にとってことさら長く感じられるものです。印象的なエピソード1~2つに絞るくらいがよいでしょう。
メモを見て話すのは問題ない
やることが多く慌ただしい中での挨拶ですから、手元でメモを見ながら話しても失礼にはあたりません。暗記するよりも無理せず落ち着いて話すこと、時間や場所などの連絡事項を明確に伝えることを心がけましょう。
葬儀後に喪主がやるべきこと
納骨先を決める
仏式の納骨は四十九日法要の際に行われるのが一般的です。神式は五十日祭の際に行われるケースと、火葬後すぐ行うケースが見られます。菩提寺や霊園にお墓がある場合は、そちらへ納骨することが多いですが、故人の希望なども踏まえて用意しましょう。
四十九日法要の準備を進める
仏教の多くの宗派では、故人が極楽浄土へ行けることを願って四十九日法要を執り行います。浄土真宗では、故人は亡くなった後すぐ極楽浄土へ迎えられると考えられていますが、遺された者が故人を偲び、感謝の気持ちを伝える場として四十九日法要も行われています。喪主は葬儀後の早いうちに四十九日法要の日程や場所を決め、法要に招く方へお知らせしましょう。
四十九日法要の準備については、下記の記事で詳しく解説しています。
香典返しの準備
喪主はお通夜や葬儀の参列者から香典などのお供えがあることを想定して、香典返しと呼ばれる贈り物を用意するのが一般的です。
「香典返し」とは、おかげさまで弔事を滞りなく終えたことの感謝の気持ちをお礼として伝えるための香典へのお返しです。お悔やみいただいた方々へ、弔事を滞りなく終えたことと御礼を伝えるために贈る物でもあります。香典には本来、大切な家族を失った遺族の悲しみを慰め、励ますという意味が込められています。
その香典に対して、無事に四十九日の法要や50日祭などが済んだという報告も兼ねて、遺族がお礼として贈るのが香典返しです。
ただし、家族葬などでは喪主が参列者からの香典を辞退し、香典返しも用意しないケースが見られます。近年は香典返しを葬儀の当日、帰りがけに手渡すことが多くなっていますが、もともとは後日改めて、四十九日の法要後などに渡すのが一般的でした。
香典返しでおすすめのアイテムやカタログギフトを下記のページで紹介しています。