日本では、お中元やお歳暮などの贈答文化が根付いています。贈答のルールやマナーは全国共通となっていますが、地域特有の風習も目立ちます。今回は、九州地方のギフトマナーや地域特有の風習をご紹介します。
※対象地域:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県
九州地方のギフトマナー①お中元・お歳暮の時期
お中元の時期は8月1日〜8月15日
九州地方では、他の地域よりも遅い8月1日から8月15日の間にお中元を贈るのが一般的とされています。8月の旧盆、いわゆる「お盆」の直前がよいと考えられているためです。遅くとも8月25日ごろまでにお届けできるよう手配するとよいでしょう。ただし、近年では他の地域に合わせて、少し早めの時期に贈ることも珍しくなくなってきました。また、地域や各ご家庭によってもお中元の時期が異なる場合があります。贈る時期に不安のある方は、贈り先のご家族やご親せきに事前に確認しておくことをおすすめします。
お中元の時期が過ぎてからのお返しなどは、下記の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
お歳暮の時期は12月10日~12月20日
九州地方では、12月10日~12月20日が平均的なお歳暮時期となっていますが、これも近年はほかの地域に合わせ、少し早めに贈る方が増えているようです。お中元やお歳暮の時期は地域によって異なりますので、基本はお贈り先に合わせたいところ。ただ、気にし過ぎてうっかり遅れてしまうよりは、少々早い方がまだ印象もよいでしょう。
地域や各ご家庭によってもお歳暮の時期が異なる場合がありますので、不安のある方は贈り先のご家族や親戚に事前に確認しておくとよいでしょう。
お歳暮の時期を過ぎてからのお返しなどは、下記の記事で解説しています。
九州地方のギフトマナー②結婚祝い・結婚引出物の慣習
福岡県には「一生一代の儀式」がある
福岡県では、結納よりも前の段階で行われる「決め樽」という儀式があります。男性側の父親と仲人が酒と鯛とお茶を女性宅へ持参して結婚の正式な申し入れをし、女性側がこれを受諾するというものです。持参品は「寿美(すみ)酒」と呼ばれ、酒は一升(一生)、鯛は一鯛(一代)、つまり生涯添い遂げることを示すとのいわれがあります。まさに「一生一代の儀式」なのです。ただし近年では、結納にまとめられることも多くなっています。
佐賀県では、鰤(ブリ)や水産加工品を結納の際に持参する
佐賀県の中でも有明湾岸では、鰤(ブリ)や水産加工品(かまぼこやちくわなど)を結納に持参する風習があります。佐賀県を含む九州北部では新婚の年に、新郎の実家から新婦の実家へ「娘さんの嫁ぶりがよい」という感謝を込めて鰤を贈る「嫁ぶり」という習慣もあり、鰤がお祝いの魚として大切にされている様子がうかがえます。
長崎県では、披露宴で卓袱(しっぽく)料理が提供される
長崎県の名物として知られる「卓袱料理」は、中国料理にルーツを持つおもてなし料理。お祝いのごちそうとされ、長崎県では披露宴で供されることもあります。ちなみに、卓袱とはテーブルクロスのことで、一般的な婚礼料理のように1人1皿ずつではなく、人数分の料理を大皿に盛りつけ、取り分けながらいただきます。
大分県では、披露宴の最後に万歳三唱をする
大分県で行われる披露宴では、「最後に出席者全員で万歳三唱をしてお開き」とする慣習があります。万歳三唱での締めは九州各地で見られるものの、大分県では特に根づいているようです。
熊本県には、「寿美樽の儀式」という風習がある
熊本県にも、福岡県の「決め樽」とよく似た「寿美樽の儀式」があります。男性側が結納の前に酒一升、鯛一尾を女性側に持参するというもので、男性の結婚に対する自覚を促すなどといういわれもあります。「決め樽」と違ってお茶は持参しませんが、結納の後にご近所へ結納品のお茶を配る慣習も見られます。
宮崎県では、「樽入れ」「お茶入れ」などを行う
宮崎県にも「決め樽」や「寿美樽」に通じる、「樽入れ」「お茶入れ」と呼ばれる儀式がありますが、これは結納前ではなく、結納そのものと併せて行われることが多いようです。また、持参品はお酒やお茶と、こちらも「決め樽」や「寿美樽」とは若干違っています。
鹿児島県では、結納前に「もらいの儀」「嫁じょもらい」を行う風習がある
鹿児島県にも「もらいの儀」「嫁じょもらい」と呼ばれる結納前の儀式があります。ちなみに「嫁じょ」とは鹿児島弁でお嫁さんのこと。男性側の持参品は酒一升に鯛一尾、または菓子折りと言われますが、この“酒”が日本酒ではなく焼酎というところが、いかにも鹿児島らしいところ。ちなみに、結納の際の手土産にも地元の銘菓「かるかん」がよく用いられます。餡よりも、自然薯などを使う生地の原価が高く「餡なしの方が高価」という珍しいお菓子です。
九州地方のギフトマナー③独自のお祝い慣習
福岡県の「博多祝いめでた」
博多祝いめでたとは、福岡県でお祝いの際に歌われる祝い唄で、博多祝い唄、祝い目出度などとも呼ばれます。「祝いめでたの若松様よ~」という歌い出しの歌詞は「めでためでたの若松様よ~」で知られる山形県の民謡「花笠音頭」とよく似ていますが、メロディはまったく違います。博多祇園山笠をはじめ、晴れの場で歌い継がれてきた唄で、披露宴など祝宴の締めの定番でもあります。近年では、サッカーチーム「アビスパ福岡」の2023 JリーグYBCルヴァンカップ初優勝を祝してサポーターたちが合唱する姿が話題になりました。歌い終えた後は「博多手一本」と呼ばれる独特の手締めで締めくくります。
熊本県の七五三では、3歳のお祝いが2回ある?
熊本県の七五三のお祝いは、数え年3歳(満2歳)の男女・5歳(満4歳)の男の子・7歳(満6歳)の女の子……という一般的なお祝いに加えて、男女ともに数え年4歳(満3歳)でも行われます。数え年3歳(満2歳)のお祝いは「髪置きの儀」とし、女の子には着物に被布、男の子には仕立て直した産着に陣羽織を着せます。そして数え年4歳(満3歳)のお祝いは「紐解きの儀」とし、女の子には三つ身(子ども用の帯をする着物)、男の子には羽織袴を着せます。
熊本県の米寿祝いでは、升掻き(と掻き)棒を配る風習がある
熊本県の一部の地方では、米寿(88歳)を迎えたお年寄りが、升でお米を計る際にすり切るための道具「升掻き(ますかき)棒」(と掻き棒とも)を自ら作り、親戚や近所に配るという風習が見られます。
鹿児島県には「数え年7歳の子が七草がゆをもらい歩く」お祝いがある
鹿児島県では、1月7日の七草の日に、数え年7歳の子どもを祝い、今後の健やかな成長を願う「七草祝い」という慣習があります。子どもたちはまず晴れ着で神社へお詣りし、その後ご近所や親戚の家を7軒まわって、それぞれの家の七草がゆを分けてもらいます。加えて晴れ姿の記念写真を撮ったり、家族でお祝いの会食をしたりと、七五三以上に盛大に祝うことも珍しくありません。