赤ちゃんを伴って参拝するお宮参りは、古くから存在する日本の伝統行事のひとつです。子どもの誕生報告と健やかな成長を願う習わしですが、いざご自身が準備するとなると、とまどうことも多いものです。今回はお宮参りにあたって必要な準備やお金について解説します。
お宮参りとは
お宮参りとは、赤ちゃんが無事に誕生したことの報告と健やかな成長を祈って、神社に参拝する伝統行事のことです。昔ながらのお宮参りでは、赤ちゃんとその両親・祖父母がそろってお参りするのが習わしでしたが、現代では赤ちゃんとその両親だけというケースも多くなっています。
また、お参りする場所は産土神(うぶすながみ・生まれた土地を守護する神さま)を祀る神社を訪ねるのが一般的ですが、後述するように、菩提寺(ぼだいじ・代々のお墓がある寺)や、ご縁のある神社などを選ぶ方もいらっしゃいます。
「初宮参り(はつみやまいり)」や「初宮詣(はつみやもうで)」とも言うほか、お寺へお参りする場合は「お初参り」と呼びます。
お宮参りの歴史
お宮参りの歴史は古く鎌倉時代にはすでに似た風習があったようです。お宮参りと呼ばれるようになったのは室町時代で、もともとは産土神に赤ちゃんを氏子と認めてもらうための、氏子入りの儀式だったと考えられています。
お宮参りをする時期は?
お宮参りの時期は地域差があるものの、生まれた日を1日として男の子は生後31日目か32日目、女の子は生後32日目か33日目が正式ではありました。しかし、現在はそこまで厳格ではありません。
1カ月検診を済ませた後や、両親や両祖父母が集まれるタイミング、または天気のよい日を選ぶなど、赤ちゃんとママの体調も踏まえて柔軟に調整しましょう。また、お宮参りは大安や仏滅にこだわらなくてもよいとされています。
お宮参りでやること
お宮参りの日は参拝、ご祈祷、記念写真、食事会をセットで行うのが基本的な1日の流れです。とはいえママ、赤ちゃんの負担を考えて、食事会は夜や後日にセッティングするなど、こちらも臨機応変に調整してみてください。
ここではそれぞれのポイントを解説します。
神社やお寺への参拝・ご祈祷
ご祈祷を受ける場合、まずは社務所(神社の事務所)で初穂料(はつほりょう)を収めます。赤ちゃんやママの体調によっては参拝だけでも構いません。
拝礼は「二礼二拍手一礼」が基本の作法ですが、神社によって違う場合があります。事前にお参りする神社の公式ホームページなどで確認しておくと安心です。
神社よりもお寺になじみがあるという方や、ご先祖に報告したいという場合には、菩提寺を選ぶこともあります。本堂の前で一礼して賽銭を入れたら、鉦(鐘のような仏具)を鳴らし、再度一礼、合掌して祈願します。最後にもう一礼して終了です。柏手はしないことを覚えておきましょう。
記念写真の撮影
お宮参りは記念撮影のよい機会です。ぜひとも思い出を写真に収めておきましょう。ご家族で撮影しあうのも一案ですが、プロに撮ってもらうのもよいアイデアです。写真館やフォトスタジオ、出張撮影など、気になる方法があれば問い合わせてみるとよいでしょう。
食事会
お宮参りの後は家族そろっての食事会が定番です。レストランや料亭、あるいは自宅など、体調や予算、スケジュールを踏まえて検討してみましょう。
お祝いをいただいたときのお返し
一般的にお宮参りに参加いただいた祖父母へのお礼やお返しは不要だといわれています。
お宮参り後の食事会をもってお礼とするのが定番ですが、食事会をしない場合や、遠方からお越しいただいた場合には、手土産をお渡しするのもよいでしょう。
また、高価なお祝いをいただいた場合には、内祝いとしてお礼の品物をお贈りしましょう。
お宮参りの前にやること準備
ご祈祷の予約
お宮参りのご祈祷予約については、予約が必要だったり、当日の随時受付のみだったりとさまざまです。特に大安や七五三、土日祝、祭典のある日は混雑が予想されますから、前もって電話や公式ホームページで確認しておきましょう。予約が可能なら、早めにお願いしておくと安心です。
記念写真の撮影予約
プロに記念撮影してもらう場合は、早めに予約を入れておきましょう。出張撮影サービスをお願いできれば、たとえば境内で過ごす自然な様子も写真に残せます。スタジオで撮影する場合には、神社からスタジオ、スタジオからご自宅までのアクセスを調べ、ご家族の負担にならないところを選びましょう。
食事会の手配
お店で食事会をする場合は、参加人数や予算お店までのアクセスなどを考慮します。また、赤ちゃんもママもリラックスできる、個室が予約できるとなおよいです。
ご自宅で食事会をする場合は、ご家族の負担を考えて仕出しやケータリングでまかなうのもよいアイデアです。
持参するものをリストアップしておく
お宮参り当日の流れを思い浮かべて、おむつセットやミルク、暑さ、寒さ対策、おもちゃ、カメラなど、持っていくものをリスト化しておきましょう。撮影や食事会もするのであれば、外出時間は長くなりますから、より念入りな準備が必要です。前日に荷物をまとめてみて、快適に過ごせるかチェックしておくと安心です。
お宮参りでかかるお金・費用相場
祝い着
赤ちゃんの祝い着は、絹でできた白羽二重(しろはぶたえ)に、祝着(のしめ)や初着などを掛けるのが正式です。しかし、着物は2万~30万円と高価な上、着る機会も少ないことから、昨今ではレンタルを利用したり、ベビードレスなどの洋装にしたりする人も増えています。
また、こうした祝い着は母方の祖父母が贈るもの(地域によっては父方)でしたが、現在では祝い着はパパ&ママが選び、費用は祖父母に援助してもらうというケースもみられます。
初穂料
お宮参りでご祈祷を受ける場合の相場は5,000円〜1万円くらいです。神社では初穂料、お寺ではご祈祷料(お布施)とします。包み方は後述します。
食事会の料金
料理の内容や人数により価格は変動しますが、1人あたり3,000円〜5,000円くらいで、お酒を召し上がる場合はもう少しプラスでみておくくらいが目安です。
食事会の料金は誰が支払うといった決まりはありません。例えば、祝い着を母方の祖父母が用意するなら食事会は父方が支払う、あるいは、両祖父母からいただいたお祝い金の一部からパパ&ママが支払うという方法もあるでしょう。バランスを見て検討してみてください。
お宮参りの服装
赤ちゃんの服装
赤ちゃんの正式な服装は、肌着の上に白羽二重(しろはぶたえ)という絹でできた内着を着せ、祝着(のしめ)や初着を掛けるというものです。祝着(のしめ)は、男の子なら兜(かぶと)や鷹など勇ましい吉祥柄、女の子なら桜や花車や蝶など華やかな柄が入っています。
最近では洋装も増えており、ベビードレスとケープを合わせたり、オーバーオールの上に祝い着を掛けたりとさまざまです。ご予算や気候にあわせて選ぶとよいでしょう。
母親・祖母/父親・祖父の服装
両親も祖父母も、フォーマルなスタイルで臨むのが基本です。主役は赤ちゃんですから、フォーマルの程度も赤ちゃんに合わせるようにします。赤ちゃんが和装なら大人も和装、洋装なら洋装とするのがバランスがよいでしょう。
母親と祖母は訪問着や色留袖、もしくは、フォーマルなワンピースやスーツが選ばれます。父親と祖父はブラックのフォーマルスーツ、もしくはダークカラーのスーツが定番といえます。
最近では選択肢がかなり広くなり、少しフォーマルを意識したくらいの服装も一般的です。控えめで品のよいスタイルを意識しつつ、季節や体調にあわせて選べば問題ありません。双方のご両親と相談してバランスよく決めましょう。
お宮参りのマナー
初穂料の熨斗(のし)
ご祈祷の謝礼にあたる初穂料は、紅白で蝶結びの水引が付いた祝儀袋を用意しましょう。蝶結びはほどくのが簡単で何度でも結び直せることから、「何度あってもうれしい出来事」に用います。
熨斗袋の表書きは「初穂料」「御初穂料」「御玉串料」「御礼」などとします。お寺にお参り(お初参り)する場合の表書きは、「ご祈祷料(お布施)」です。
下段には赤ちゃんの姓名を記載します。地方によっては父親の名前を併記するところもあります。
赤ちゃんを抱っこするのは誰?
伝統的なお宮参りでは、父方の祖母が赤ちゃんを抱っこすることになっています。これは、神道において血は「穢れ(けがれ)」と考えらており、出産もそのひとつと捉えられてきたためです。しかし、現在はあまりこだわりがなく、誰が抱っこしても問題ありません。